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【寄稿】知ってる?フェアトレードとスポーツの深い関係(前編)

はじめに
フェアトレードをご存知でしょうか?オリンピック・パラリンピックにも実は関係が深いんです。昨年夏のリオデジャネイロ大会で、フェアトレード認証コーヒーが調達されていたことは、日本ではほとんど知られていません。
 そこで今回は、読者の皆様にフェアトレードをより知っていただきたく、前編・後編の2回にわたりお伝えします。前編では、フェアトレードとはなにか、なぜ必要とされているのか、世界で起こっている課題の解決にフェアトレードがどのように繋がっているのかを解説します。後編では、フェアトレードとスポーツ、オリンピック・パラリンピックとの関係についてご紹介します。

フェアトレードは、フェア(対等)な関係を大切にした取引により、生産者と消費者をつなぎ、ともにサステナブル(持続可能)な社会を目指す「貿易のしくみ」です。

フェアトレードは、フェア(対等)な関係を大切にした取引により、生産者と消費者をつなぎ、ともにサステナブル(持続可能)な社会を目指す「貿易のしくみ」です。

【前編】フェアトレードってなに?

フェアトレードって聞いたことはあるけど、正直なところ、その実態はよくわからないという方、多いんじゃないでしょうか。直訳すると「公正・公平な(Fair)」「貿易(Trade)」という意味ですが、簡単にいうと、作る人の生活や環境を考え、サポートする公平な「貿易のしくみ」のことです。フェアトレード商品として代表的なものには、コーヒーや紅茶、チョコレートやバナナなどがあります。こうした農作物の多くは、開発途上国と呼ばれる経済的にまだまだ厳しい状況下におかれる小規模農家の方々によって生産され、それが貿易によって世界中に流通しています。

世界にはいまだ8億人以上の極度の貧困にあえぐ人たちがいて、その約半数は小規模農家の人たちといわれています。また、教育の機会を奪われ、有害な労働に従事させられている児童労働者は1億6800万人にものぼり、世界の子どもの9人に1人にあたります。そしてそれら児童労働の約60%は農林水産業に集中していると報告されています。なぜそのようなことが起こってしまうのでしょうか?
貧しい国々でいまこの瞬間も、劣悪な労働環境で働く人々や丹精込めて作った農作物を不当な価格で買い叩かれている人々、強制的に危険で有害な労働に駆り出されている子どもたちがいると聞けば、心を痛める方も多いでしょう。もしくは、貧しい国に生まれてしまった不幸な運命だから仕方ない、私たちにはどうすることもできない、と思う方もいるかもしれません。しかし、こうした深刻な問題が、実は日本に暮らす私たちの日常と無関係ではないとしたらどうでしょうか?

現在のグローバル貿易の仕組みは、こうした経済的にも社会的にも弱い立場の開発途上国の人々にとって、時に「アンフェア」で貧困を拡大させています。例えばコーヒーは、一次産品としては石油に次いで世界第2位の取引規模を誇っていますが、生産地域の9割以上が開発途上国です。コーヒー豆の買い取り価格は、生産現場とは遠く離れたニューヨークとロンドンの国際市場で決められます。需要と供給のバランスだけでなく、投機マネーも流入し、日々激しく値動きします。マーケット動向の情報や市場への販売手段を持たない小規模農家の多くは、中間業者に頼らざるを得ない状況にあり、時に生産コストすらまかなえない価格で売らざるを得ません。そのような状況では、子どもを学校に行かせることもできず、環境を守りながら品質のいいものを作ることもできません。

私たちが日ごろ何気にスーパーやコンビニで買ったり、カフェ・レストランで食べたり飲んだりしている商品や、身を纏うために欠かせない衣類が、実はこうした背景のもとで生産され取引されているのです。私たちが行き過ぎた低価格を追い求めるあまり、作る人たちにしわ寄せがいっているかもしれないのです。これは、決して「途上国の人々は貧しくて可哀そうね」というだけでなく、結果として最終的には日本で商品を楽しむ私たちにも跳ね返ってくる問題です。生産者が買い叩かれているような状況では、この先も手間暇かけて品質のいいものを作っていこう、とはなかなかなりません。いかにしてコストを抑えるかを考え、森林を伐採してより手間のかからない農作物に切り替えたり、時に効率を求めて農薬を多用したりと、環境へのダメージにも繋がります。それに加え、近年は気候変動の影響も深刻で、気温上昇と降雨パターンの変化が引き起こす収穫高と品質の低下、それから病虫害の被害拡大によって、生産者の貧困に拍車をかけ、近い将来、コーヒーやカカオが世界的に不足するとも予測されています。

国際フェアトレード基準を守った商品に貼付される国際フェアトレード認証ラベル

国際フェアトレード基準を守った商品に貼付される国際フェアトレード認証ラベル

このような世界規模の課題である貧困や環境問題を、貿易のしくみから解決していこうというのが「フェアトレード」です。国際的に最も認知され浸透しているしくみが、国際フェアトレードラベル機構(1997年設立、本部・ドイツ)によって設定されている国際フェアトレード認証基準です。生産者が買い叩かれることのないよう、持続可能な生産と生活のために必要な「フェアトレード最低価格」が、産品や品種、生産地ごとに具体的な金額で定められており、国際市場価格がどんなに下落しても、フェアトレードの取引においては、輸入業者は「フェアトレード最低価格」以上を生産者組合に保証するルールです。
また生産者組合や地域全体の社会発展のための「フェアトレード・プレミアム(奨励金)」も別途、定められており、取引量に応じて輸入業者が直接、生産者組合に保証する決まりです。それにより、生産者は安定して環境を守りながら生産に励むことができ、皆で地域をより良くすることが可能になるのです。

フェアトレードでもう一つ大切なのが「エンパワメント(Empowerment)」という視点です。生産者自身が自らの力で貧困から脱却し、さらに発展していくための「力(パワー)」をつけ、先進国と途上国という上下の関係ではなく、お互いが対等なパートナーとして共に持続可能な社会を目指します。
このフェアトレード、実はスポーツにも深い関係があるのです。後半は、オリンピック・パラリンピックとフェアトレードの関係をご紹介します。

国際フェアトレー認証製品の数々。世界全体で約1兆円の市場規模があり、125カ国以上で国際フェアトレード認証ラベルの付いた製品が流通しています。日本の市場規模は約100億円(2015年実績)

国際フェアトレー認証製品の数々。世界全体で約1兆円の市場規模があり、125カ国以上で国際フェアトレード認証ラベルの付いた製品が流通しています。日本の市場規模は約100億円(2015年実績)

【著者/プロフィール】
中島佳織(特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパン 事務局長)
大学卒業、化学原料メーカー勤務を経て、国際協力NGOでアフリカ難民支援やフェアトレード事業に携わる。 2001年~2002年、タイ・チェンマイ駐在。タイ北部山岳少数民族コーヒー生産者支援プロジェクトの立上げと運営に従事。2003年~2006年、ケニア・ナイロビにて日系自動車メーカーのマーケティングとロジスティックス部門に勤務。学生時代から途上国の貧困問題と向き合う中で、「寄付」や「援助」ではなく、貧困を生みだす歪んだ貿易構造から変えていこうとするフェアトレードに賛同し、2007年6月より現職。
共著『ソーシャル・プロダクト・マーケティング』(産業能率大学出版部、2014年)
寄稿『[新] CSR検定3級 公式テキスト』(株式会社オルタナ/公益財団法人日本財団、2014年)
寄稿『未来を拓くエシカル購入』(環境新聞社、2012年)

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関東を拠点している車いす陸上の仲間たちとともに。
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