5000m決勝 小雨の中を走る樋口政幸選手

5000m決勝 小雨の中を走る樋口政幸選手

アジアパラ競技大会・陸上男子T54(車いす)の中長距離のレースは、タイ、中国の選手の強さが光るなか、日本の樋口政幸選手(35歳、バリストライド)が5000mで銅メダルを獲得した。

5000m決勝(10月21日)は、小雨が降る中でのレースとなった。タイのTANA Rawat選手、WAHORAM Prawat選手が、ハイペースで集団を引っぱる展開。中盤以降はRawatが引っぱり続けて、そのままゴールした。1位のTANA Rawatの記録は10:24.31、2位のPrawatは10:24.37。そのあとに樋口が続き、記録は10:26.77だった。

「タイの選手が速かったです。余裕があったら前に出ようと思ったんですが、前に出たら、最後につぶれてしまうと思って出ることができませんでした。ラストスパートで、さらに離された感じです。彼らは、スピードも持久力もありますね。スイスのマルセル選手(Hug Marcel選手、5000mの世界記録保持者)、イギリスのデヴィッド選手(Weir David選手、ロンドンパラリンピック金メダル獲得)と同じような強さを持っています。欧州勢よりも、今、アジア勢が強いという感じがしました」と樋口。

今大会800m、1500m、5000mに出場したが、メダル獲得に絡める可能性が高いのは距離の長い順番だと考えていた。最初のレースとなった5000m決勝は、銅メダル獲得という結果をのこすことができたが、その一方で、1位、2位を獲ったタイの選手との間に力の差を感じたレースでもあった。

続く、800mは、予選(10月22日)から厳しかった。
予選は3組あり、各組2着までの選手と、そのほかの選手の中でタイムの上位2名の選手が決勝進出するかたちだったが、樋口は予選3組の3着。タイムの上位で決勝に進出した。800m決勝(10月23日)は、タイの3選手(1位KONJEN Saichon選手、2位TANA Rawat選手、3位WAHORAM Prawat選手)が表彰台を独占。これに中国の選手(4位LIU Yang選手、5位LIU Chengming選手)が続き、樋口は6位。800mは、タイ勢に、中国勢が加わり、強さをみせつけられたレースだった。

男子T54 1500m決勝 写真中央、金メダルを獲得したタイのTANA Rawat選手。写真左が樋口選手

男子T54 1500m決勝
写真中央、金メダルを獲得したタイのTANA Rawat選手。写真左が樋口選手

競技最終日(10月24日)の1500m決勝、スタートが2レーンだった樋口はインレーンを死守する作戦を選択した。ラスト1周の残り200mまでの展開は、うまくいっていた。その時点では2番手につけており、ラストスパートをかけていけば、そのまま上位でいけると思ったという。

ところが、ホームストレートに入ると、状況は一変する。
残り100mを切ると、タイ勢(1位TANA Rawat選手、2位KONJEN Saichon選手、6位WAHORAM Prawat選手)、中国勢(4位CUI Yanfeng選手、5位LIU Chengming選手)が一気に前に出た。韓国のHONG Suk-Man選手(3位)も反応がよく、樋口は7位に終わった。

樋口は、「自分の持っているもの、出せるものは出したと思います。もう、単純な力負けです」と話した。

樋口は、2012年のロンドンパラリンピックの後、走りを根本から作り直してきた。
2014年は、IPC(国際パラリンピック委員会)のグランプリシリーズなどに出場し、マルセルやデヴィッドなど欧州の強豪選手と競う機会もつくってきた。アジアパラに照準をあわせて調整も順調にきていた。

ただ、タイ、中国の選手のレベルは、前回の2010年広州アジアパラ競技大会のときとは異なっていた。想定していた以上に、高かった。

ロンドンパラリンピックまでと同じスタイルで走っていたら、今大会のレースは惨敗になっていたかもしれない。ロンドン以降に取り組んできたことの方向性は間違いではなかったが、タイと中国の選手たちは一段とレベルアップしていたと、樋口は感じている。

今回のアジアパラ競技大会は、男子T54の中長距離で世界のトップに立つことの厳しさを、改めて思い知らされるものとなった。
今後に控えている大きな舞台は、2015年10月にドーハで開催予定のIPC陸上世界選手権だ。2016年のリオ・パラリンピックの足音が聞こえてくる頃にある。

「今回の結果は結果として受けとめて、次に、どうするかを考えたいと思います。来年の世界選手権には、強くなっていたいと思います」。

樋口は、そう言った。

(取材・撮影/河原由香里)